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2014年 02月 12日
キャットマンコミック、アラカルト ------------------------------------------------------------------ 『スーパーヒーローになろう』 さぁ、書こうと思ったら、突然、デーモン小暮閣下の声が聞こえましてね・・・ というわけで、デーモン語調でいきます。 おはよう。(少し力んだ低音でゆっくりと発音されたし) 諸君たちはエキサイティングな日々を過ごしているか? なに? 生活に刺激がない。毎日が単調で退屈。 それはいかんな。それならば、サンフランシスコでスーパーヒーローになるというのはどうだろうか。大都会には吾輩のように地球制服を目論んでいる悪魔がうじゃうじゃいるからな。そいつらを見つけて追っかけて捕まえて、非常にハードな仕事だが、刺激度は100パーセントだ。なかなか面白いぞ。ングゥワッハハハ。 その気になったらキャットマンに弟子入りすることだな。アルカトラズの灯台に行けば会えると思うが、そこにいなければ、トランスアメリカピラミッドで飛行訓練をしているはずだ。 「出て行け。私有地に入って来るな」 「そうだそうだ! ツナ持ってない奴は来るな!」 thbbft;アッカンベー この赤いマントを付けた”ちゃっこい(小さい)”のがスーパースミエ、間違えるな。スーパーマーケットの名前ではない、キャットマンの一番弟子でヒーロー訓練生だ。それなりに頑張っているようだが・・・ 吾輩が見たところ、止まり方にだな、大いに問題があるようなので、諸君も激突されないように十分に注意してくれ。 訓練が終わると、コイトタワーまで空中ランニングをしてることもあるから、トランスアメリカピラミッドにもいなければ、 空を見ろ。我が僕(しもべ)たちの声を聞け。 「鳥だ!」 「飛行機だ!」 「いや、スーパーキティーだ」 彼らの指差す方向に目を向けろ。キャットマンはそこにいる。 ヒーロー訓練生になると、キャットマンについて暗黒街をパトロールをするわけだが、「冷酷、残酷、非常識」な世界では油断は禁物だ。突然、強烈なネコパンチが飛んでくることもある。まぁ、痛い思いをするのはだな、ヒーローの宿命だと思ってあきらめることだ。目の周りが紫色に腫れ上がったら、 「憎い アンチクショウの顔めがけぇ~~、叩け、叩け、叩けー! おいらニャァァァァァ~~」 と布団の中で『明日のジョー』リベンジの歌でも歌っていれば、そのうちに腫れもひいてくるだろう。 これでもまだ生活に刺激が足りないというのなら、傷口にトウガラシ軟膏をすりこめば最高の刺激を味わうことができると断言しよう。グワッハハハハ。 それでは諸君、また会おう。 『ちゃこい』について 茶色くて小さいの縮小語 語源:我が家には「とのちゃん」という名の茶色いダックスフンドがいました。残念ながら昨年、他界しましたが、我が家にたくさんの笑いを振りまいてくれた、その偉業を讃え「とのちゃん」のために作った形容詞「ちゃっこい」は現在でも我が家の会話で使われています。 ------------------------------------------------------------------------------- (2013年、11月に考えたお話) サンクスギビングディーに贈るミニストーリー 『スミエ、ホームレスになる』 キャットマンとスーパースミエの家は、ロシアンヒルの高台にあるとても見晴らしの良いところです。天気の良い日は窓を開けると真っ青な空に白いアルカトラズ、その向こうに薄っすらと浮かぶ金門橋。それはそれはうっとりするほど美しい眺めで、大きな額縁に入った風景画を見ているようです。 おなかが減れば、ニャーの一声で、飼い主のブライアン巡査がツナをくれます。時々キャットマンには、サーモンとマグロのフレーク。スミエにはヒラメ入りのゼリー仕立て。夜は、あったかいフカフカのベッドで誰にも邪魔されることなくぐっすり眠ることができます。生まれた時から人に飼われていたスミエには、この暮らしが当たり前。サンフランシスコでは皆、こういう暮らしをしていると思っていました。 ところが、キャットマンの弟子になり、空中パトロールをしている間に気が付いたことがあります。空から見ると、サンフランシスコのストリートは升目に仕切った幅の広い用水路のようです。明るい場所では、きれいな水が激しく流れ、暗い場所では汚い水が淀んでいるようにみえます。 ――暗いところにいる人たちは、どうして同じ場所にずっと座っているのかな? 歩けないのかな? それとも病気かな? スミエは暗い場所に興味を持ち、そこへ行ってみたいと思いました。キャットマンにそのことを言うと、「スミエはまだ小さいから」という理由で連れて行ってくれません。ブライアンも「キャットマンのバックアップなしではそこへ行ってはだめだ」と言います。 「行くな」と言われると行きたくなる、「来るな」と言われると来たくなる、というのが猫の習性です。ほら、こういうことわざもあるでしょ。 『女と猫は人が呼ぶときには来ないで呼ばない時に来る(byボードレール)』 スミエも女の子。気まぐれな子猫なんです。 そうして感謝祭の前日、キャットマンとブライアンがパトロールに出かけている間に、キャリーバックにささやかな荷物を詰め、一人でここまでやってきました。 みすぼらしい服を着た汚れた顔の人たちが足を引きずりながら歩いています。道の真ん中でたむろしている人たちがいます。その横を通ったとき、嫌な臭いがしました。向うから片手をポケットに突っ込んだプリズンウォーク(注1参照)の若者が近づいてきます。スミエの側まで来ると、ニタニタ笑いながら 「ねぇ、1ドル貸してよ」 随分、馴れ馴れしい口調で言います。 スミエが「ない」というと、軽く手を挙げてニタニタ笑いながら行ってしまいました。 歩いていると、「変な人」「気味の悪い人」「怖い人」「なんだかよくわからない人」を度々見かけます。でも、スミエの顔見知りにはひとりも出会えませんでした。 「汚い・臭い・怖い」――アンダーワールドを代表する形容詞が三つもそろった非情の街テンダーロイン。スミエが生まれて初めてみたサンフランシスコの裏側です。 スミエは歩き続けました。どこをどう歩いたのかわかりません。歩き疲れてちょっと休もうかと思っても、歩道はごみとシミだらけ。そんな汚い所に座りたくはありません。綺麗な場所を探してさらに歩き続けると、小さなコミュニティーガーデンを見つけました。フェンス越しに中をのぞくと、ごみもなく、雨宿りにちょうどいい軒下もあります。 (ここはテンダーロインの中にある貸し菜園。利用者以外立ち入り禁止。入口には鍵がかかっています。) ほっとした途端に、おなかの虫がフニャァ~~と泣きました。そういえば、家を出てから何も食べていません。おなかがペコペコです。でもツナは持ってきませんでした。お金もありません。スミエは「はぁ~」とため息をついて、ガーデンの中に入り、スコップやバケツがしまってある小屋の軒下に座りました。ここならば雨には濡れません。でも、一人でじっと座っていると寒くて心細くて悲しくなってきました。スーパーヒーローの訓練生はこんなことで泣いちゃいけないとわかっていても、涙が出てきます。スミエはキャリーバックからテディーベアのぬいぐるみを取り出しました。 「つまんないね、こんなとこ。寒いし、汚いし。面白いことなんて何にもないし。やっぱりこんなとこ来るんじゃなかった。雨が止んだら帰ろうね」 スミエは、テディーベアに語りかけます。でも何も答えてくれません。テディーベアと一緒に、寒さをこらえてうずくまっていると、大好きな食べ物が頭に浮かんできます。ブライアンのくれるツナの缶詰め。バターがたっぷりついたパンケーキ。甘いミルク。生クリームの一杯のったパンプキンパイ。増々おなかが減ってきました。もっと違うことを考えようと思っても、頭の中はすぐに食べ物に占領されてしまいます。 そのうちにあたりが暗くなり、雨脚は遠のくどころか増々、激しくなってきました。寒さ、空腹、寂しさ、不安。惨めな思いを抱いたまま、眠気に襲われるまでずっと座り続けていました。 それから数時間後、スミエは自分の部屋のベットで目を覚ましました。家まで連れ戻したのはキャットマンです。パトロール中にスミエを見つけ、それからずっと後をつけていました。スミエが危ない目にあわないように1日中キャットマンが見守っていたのです。 スミエにはキャットマンという守護者がいます。帰る家もあります。でも、路上で生活している人たちには何もありません。お金もない、家もない、食べ物もない、かろうじて持っているものといえば、着古した洋服と自分の命だけ。雨のガーデンでスミエが感じたことは、路上で生活している人たちが毎日感じていることです。 テンダーロインには無料で食べ物をもらえる教会があります。でも、食べ物だけでは不安を消し、孤独を満たすことはできません。 「どうすればいいんだろう。何が足りないんだろう」 スミエは考えました。そうしてあれこれ考えているうちにグッドアイデアが浮かびました。 『良いと思えばレッツゴー』――お師匠キャットマンの教えです。 スミエはきれいな便箋に手紙を書きはじめました。 (なぜ、猫に字がかけるのか? キャットマンに教えてもらったんですよ。その辺のことは現在製作中の『キャットマンビギンズ』をお楽しみに) 手紙を書きおわると、貯金箱からコインを数枚取り出して手紙と一緒に封筒に入れ、それを持ってテンダーロインの教会に行きました。 今日は感謝祭です。ターキーとパンプキンパイをもらうために貧しい人たちがたくさん集まっています。ボランティアの人たちも、炊き出しを手伝っています。その中に黒人の神父様がいました。 スミエが手紙を渡すと、神父様はにっこり笑って封を開き、読み始めました。 「神父様へ わたしのなまえはスミエです。きのう、ちょっとだけ路上せいかつをしました。とても寒くてこわかったです。 でも、キャットマンが助けてくれました。キャットマンはいつもスミエのことを守ってくれます。路上せいかつをしてる人たちにも、キャットマンみたいに、見守ってくれる誰かがいたら、きっとさびしくないと思います。今よりも、もっとがんばれると思います。 だから、スミエは路上せいかつをしてる人たちを守る頼もしいバックアップになろうと思います。スミエが見守ってるから安心だと思ってもらえるスーパーヒーローになりたいです。 スミエが貯めたコインをいれました。このお金でターキーとパンプキンパイをたくさん作ってください。みんながおなかいっぱい食べられますように。 キャットマンの弟子。スーパースミエより」 神父様は手紙を読み終えると、優しい笑みを浮かべ、封筒の中に入っていた1ダイム10個を募金箱に入れました。 (1 dime 10個は約100円) -------------------------------------------------------------------------------- 注1;プリズンウォーク; ポケットに片手を突っ込んで歩くのは囚人特有の歩き方。たいていポケットの中には薬物かナイフ、拳銃が入っています。収容所の中で囚人同士がすれ違った時に、看守に見つからないように武器やお金などの受け渡しが素早くできるように、一方の手はポケットから出しています。テンダーロインのような犯罪者が集まる街で、こういう歩き方をしていると、警官に呼び止められることもあります。ただし、日本人の観光客がテンダーロインでこれをやっても、「こいつはアホちゃうか」と思われるだけです。警官に目を付けられる心配はありませんが、もっとやばい人に呼び止められるかも。 --------------------------------------------------------------- あとがき 読んでいただきありがとうございます。 次回作はスミエのお話です。カテゴリーの「次回作・予告編」に簡単な作品紹介を載せました。 お時間ありましたら、のぞいていただくと、作者、ハッピーになります。 どうぞよろしゅうに。
by prairycat
| 2014-02-12 21:23
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