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2014年 02月 15日
『オーシャンビーチ』
by キース・ギャラガー ――ともに歩いたケイコへ捧げる―― (キース・ギャラガーはこの小説に登場する警部です。「ビヘッダー・切断」 超スロースピードで更新中 https://www5.hp-ez.com/hp/sfpd/page9 サンフランシスコの西の果て 寄せ来る大波、岸壁に 悠久の時を刻む 荒涼たる岸辺 遮るものを知らず ひとたび、風、立てば 第一の標的となれり サンフランシスコの霧は多くの芸術家を魅了する。 かつてアメリカの詩人カール・サンドバーグは街に降り立つ霧を猫に例えて表現した。これほど簡潔かつ的確にサンフランシスコの霧を描写した詩を私は他に知らない。 霧が来る 小さな猫の足つきで 静かに腰をおろして 港と街を眺め渡している それから動いていく 時々、こんな日がある。夏。暗い灰色の霧雲が街の最西端に何週間も留まり、ベイエリアに冷気を運ぶ。 街はたちどころに冬となる。 サンフランシスコの夏が一番寒い(マーク・トゥエイン) (『ビヘッダー』から抜粋) フルトンストリートで左折し、サンフランシスコ市立大学のキャンパスを過ぎ、ゴールデンゲートパークの北側に沿って、ひたすら西を目指した。サイレンを鳴らした真っ黒なシボレーが迫ってくると、ほとんどの先行車は道を譲ってくれる。しかし、途中で一度だけ一旦停車しなければならなかった。フルトンストリートとパークプレシディオブルーバードの交差点は、交通量が多すぎる。サイレンが聞こえなかったのか、聞こえても止まる気がないのか、何台も、緊急車両を無視して交差点を走り抜けていく。キースはこの交差点だけは交通ルールに従い、青信号に変わるまで待った。信号が変わると再びアクセルを踏み込み一気に加速して、交差点をわたり、サンフランシスコの西の果てを目指す。 一見するとしゃれた民家に見えるポリスアカデミーを通り過ぎ、1913年に建設され1972年の9月に取り壊され、今は廃墟となったプレイグラウンドを右手に眺めながらアクセルを踏み続けた。 シボレーの窓から見える風景は早送りの映像のようにまたたくまに切り替わっていく。フルトンストリートの突き当たりになるグレートハイウェイで右折した。キースにとって、この付近は懐かしい場所である。子供時代の楽しかった思い出がよみがえってきた。 シボレーは険しい坂道をエンジンをうならせながら上り、海岸線に沿ってしばらく行くと、サンフランシスコの最西端の崖っぷちに立つクリフハウスが見えてきた。以前は宮殿のような外装のホテルだったが、現在のクリフハウスは平凡なドライブインにしか見えない。しかし、ここからの眺めは最高である。 数メートル沖合いに、大きな岩が突き出た《シールロックス(seal Rocks)》と呼ばれている岩場がある。波で浸食されて、洞窟のような穴があいた岩の中は、アシカの休憩所になっている。 ---------- 現在のクリフハウス シールズロック ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 子供の頃に住んでいた家は、それがどれだけ老朽化してもずっとそのままでいてほしい。そんなことを言うと「おまえは懐古趣味でいかん」とジョンの声が聞こえてきそうだ。 そうはいっても、大人になって、その場所を訪れた時に、すっかり変わってしまっていたら、自分の思い出まで消されてしまったようで寂しいじゃないか。 去年のクリスマスイブに、ケイコをつれてここへ来た。私が15歳になるまですんでいた家。あのころは薄い黄色の壁だった。今は、見ての通り、紫とオレンジに変わってしまった。どうやらこの家のオーナーは、色彩学を学んだ経験がないようだ。 近隣の風景は、住宅の外壁が塗り替えられたというだけで、ほとんど変わっていない。少し歩くと、昔よく遊んだ友人の家があったが、今は誰も住んでいない。 道路を挟んで左側にはもう何もない。日本へ続く太平洋が広がっているだけである。 「ここが、サンフランシスコの一番西側を走っている道路だ」 歩きながらケイコにいうと、 「それじゃぁ、この道路の名前は『西果て(さいはて)通り五番街』」 彼女は一人で納得したようにうなずいた。 「何故、五番街?」 「ことばの響きがいい感じ」 「わからんな、何故、ナンバー5なんだ?」 「理由がいるの? Just because(ただ、なんとなく)、それじゃダメ?」 ケイコが『西果て通り』と名付けた道路を南に下ると動物園がある。私ひとりならば立ち寄ることもない場所だが、今回は妻がいる。 「行ってみるか?」 私が訊くと、ケイコは少し驚いた顔で言った、 「こういうところは人が多くてやかましいから嫌いなんでしょ。どうしたの?」 「Just because、それじゃダメか?」 正門を入ると以前はプールがあったが今は駐車場に変わっていた。園内もきれいに改装されていたが、ところどころ、私の子供時代を思い出させてくれるものも残っていた。 若いころは、新しいものを見て感動したが、年を取ると、懐かしいものを見て感動する。 ------------------------------------- オーシャンビーチ 写真の奥、霧にかすんだところから海岸線に沿って歩いてきた。こうしてみると平坦な道のように見えるが、途中で上り坂の勾配がきつくなり、私も妻も何度も立ち止まらなければならなかった。それでもここに来て、二人で歩いてきた道を振り返ってみると、よくぞここまでこれたものだと、大きな驚きと感動がある。 私たちが立っているこの場所には、世界最大級の屋内プール「スートロバス」を建設したアドルフ・スートロ氏の大邸宅があった。 しかし、人は誰であっても『栄枯盛衰の法則』から逃れることはができない。 スートロ氏の所有した広大な敷地は国定公園に組み込まれ、豪邸は一本の木に変わった。 (クリフハウスから見たスートロバス) 「ここはふしぎな場所ね。日本から8000マイルも離れているのに、日本の古い歌が似合う」 ケイコはそういって、私にこの歌を教えてくれた。 今荒城の夜半の月 変わらぬ光誰がためぞ 垣に残るはただ葛 松に歌ふはただ嵐 天上影は変はらねど 栄枯は移る世の姿 映さんとてか今も尚 ああ荒城の夜半の月 #
by prairycat
| 2014-02-15 13:38
| 課題
2014年 02月 14日
ホームレスとフォトジャーナリストの共通点・
1. くすんだ色の服を着ている 2、ときどき、危険な場所にいる 3. 大きなカバンを持ち歩いている 4. 人間の悲劇を見ている 彼らは時々、ヘッドバンドしてるけど、何か意味があるのかな? ただの汗拭き? マーケット&カーニーストリート ストックトン&オファーレルストリート 『犬を抱いた女性』 彼女は何かを書いていました。着ている洋服がまだ汚れていなかったので、彼女はホームレスの初心者かもしれません。願わくば、この場所に長居をせず、ここから抜ける道を一刻も早く見つけること。それができなければ、レイプされて殺されるか、自分が売春婦になるか、そんな道しか残されていません。 『格差』 後ろは高級百貨店、ルイヴィトンのショーウインドウ、ドレスアップしてブランドショップの袋を持った女性。 座っているのは汚れたカバンを持ったホームレスの若者 ファイナンシャル地区の裏通り。 マーケット&ドラムストリート、 マーケットストリート。彼の所有物は布団一枚だけ。 カラシスプレーをもって、絶望の街テンダーロインへ 危険だとわかっている場素へ何故いくのか? 戦場とか収容所とか、絶望が渦巻いてる場所には、何か妙な魔物が住んでいて、そいつらが外から来た人間にとりつくのかも。 「外から来た人間」といっても、ただの通りすがりは別にして、その場所に興味を持って入ってきた人間です。 そういう人たちと、その場所にお住まいの魔物と周波数が合っちゃうんでしょうか? 「「こいつらはここが好きなのか。そうか。よし。其れならもっといいものを見せてやろう」って、世話好きな魔物さんが、スッゴイ光景を見せてくれるんです。 もちろん、美しい風景じゃない。 人間は、美しい風景だけじゃなくて、醜い風景にも心を動かされます。 それは、「感動」というよりも、なんというのかな、、、 心の肉壁を内部からえぐられて、その傷口に、魔物さんが見せてくれた光景がこびりついて、生涯消えない、そんなのはもう見たくないと思いつつ、また見たくなって、そこへ行ってしまう。 そうすると、魔物さんが大喜びして、スッゴイのをまた見せてくれる。 そうやって、「危険な場所中毒」になっていくんです。 麻薬と一緒。 わたしも、とりつかれた一人です。 今回、テンダーロインの魔物は、こんなものをみせてくれました。 サンフランシスコで一番危険な場所。ターク&テイラーストリート交差点、殺人事件多発エリア 1/20, 9:10pm クラブ21で発砲事件。 2名 重症。犯人は20歳男性 クリスマスのイベント。 低所得者やホームレスたちは、赤いバックをもらうために並んでいます。 バックの中身は食料品。全部無料。 残念ながら、すべての人には行きわたりません。 もらえなかった人は、あきらめて歩道に座り込むか寝てしまうか。 この男性は、せっかく食べるものをもらっても缶切りがないので、開けることができません。ナイフのようなもので、こじ開けようとしてます。 タークストリート 売春婦とそのパトロン(あるいは客) 彼女の顔、血色が悪く、口元と目の周りになぐられたような跡があり、普通の女性ではないことが一目でわかります。 サンフランシスコはこんなとこばっかりじゃないので、ぜひ、遊びに来てください。 キャットマンとスーパースミエがご案内します。 #
by prairycat
| 2014-02-14 08:13
| 写真
2014年 02月 12日
キャットマンコミック、アラカルト ------------------------------------------------------------------ 『スーパーヒーローになろう』 さぁ、書こうと思ったら、突然、デーモン小暮閣下の声が聞こえましてね・・・ というわけで、デーモン語調でいきます。 おはよう。(少し力んだ低音でゆっくりと発音されたし) 諸君たちはエキサイティングな日々を過ごしているか? なに? 生活に刺激がない。毎日が単調で退屈。 それはいかんな。それならば、サンフランシスコでスーパーヒーローになるというのはどうだろうか。大都会には吾輩のように地球制服を目論んでいる悪魔がうじゃうじゃいるからな。そいつらを見つけて追っかけて捕まえて、非常にハードな仕事だが、刺激度は100パーセントだ。なかなか面白いぞ。ングゥワッハハハ。 その気になったらキャットマンに弟子入りすることだな。アルカトラズの灯台に行けば会えると思うが、そこにいなければ、トランスアメリカピラミッドで飛行訓練をしているはずだ。 「出て行け。私有地に入って来るな」 「そうだそうだ! ツナ持ってない奴は来るな!」 thbbft;アッカンベー この赤いマントを付けた”ちゃっこい(小さい)”のがスーパースミエ、間違えるな。スーパーマーケットの名前ではない、キャットマンの一番弟子でヒーロー訓練生だ。それなりに頑張っているようだが・・・ 吾輩が見たところ、止まり方にだな、大いに問題があるようなので、諸君も激突されないように十分に注意してくれ。 訓練が終わると、コイトタワーまで空中ランニングをしてることもあるから、トランスアメリカピラミッドにもいなければ、 空を見ろ。我が僕(しもべ)たちの声を聞け。 「鳥だ!」 「飛行機だ!」 「いや、スーパーキティーだ」 彼らの指差す方向に目を向けろ。キャットマンはそこにいる。 ヒーロー訓練生になると、キャットマンについて暗黒街をパトロールをするわけだが、「冷酷、残酷、非常識」な世界では油断は禁物だ。突然、強烈なネコパンチが飛んでくることもある。まぁ、痛い思いをするのはだな、ヒーローの宿命だと思ってあきらめることだ。目の周りが紫色に腫れ上がったら、 「憎い アンチクショウの顔めがけぇ~~、叩け、叩け、叩けー! おいらニャァァァァァ~~」 と布団の中で『明日のジョー』リベンジの歌でも歌っていれば、そのうちに腫れもひいてくるだろう。 これでもまだ生活に刺激が足りないというのなら、傷口にトウガラシ軟膏をすりこめば最高の刺激を味わうことができると断言しよう。グワッハハハハ。 それでは諸君、また会おう。 『ちゃこい』について 茶色くて小さいの縮小語 語源:我が家には「とのちゃん」という名の茶色いダックスフンドがいました。残念ながら昨年、他界しましたが、我が家にたくさんの笑いを振りまいてくれた、その偉業を讃え「とのちゃん」のために作った形容詞「ちゃっこい」は現在でも我が家の会話で使われています。 ------------------------------------------------------------------------------- (2013年、11月に考えたお話) サンクスギビングディーに贈るミニストーリー 『スミエ、ホームレスになる』 キャットマンとスーパースミエの家は、ロシアンヒルの高台にあるとても見晴らしの良いところです。天気の良い日は窓を開けると真っ青な空に白いアルカトラズ、その向こうに薄っすらと浮かぶ金門橋。それはそれはうっとりするほど美しい眺めで、大きな額縁に入った風景画を見ているようです。 おなかが減れば、ニャーの一声で、飼い主のブライアン巡査がツナをくれます。時々キャットマンには、サーモンとマグロのフレーク。スミエにはヒラメ入りのゼリー仕立て。夜は、あったかいフカフカのベッドで誰にも邪魔されることなくぐっすり眠ることができます。生まれた時から人に飼われていたスミエには、この暮らしが当たり前。サンフランシスコでは皆、こういう暮らしをしていると思っていました。 ところが、キャットマンの弟子になり、空中パトロールをしている間に気が付いたことがあります。空から見ると、サンフランシスコのストリートは升目に仕切った幅の広い用水路のようです。明るい場所では、きれいな水が激しく流れ、暗い場所では汚い水が淀んでいるようにみえます。 ――暗いところにいる人たちは、どうして同じ場所にずっと座っているのかな? 歩けないのかな? それとも病気かな? スミエは暗い場所に興味を持ち、そこへ行ってみたいと思いました。キャットマンにそのことを言うと、「スミエはまだ小さいから」という理由で連れて行ってくれません。ブライアンも「キャットマンのバックアップなしではそこへ行ってはだめだ」と言います。 「行くな」と言われると行きたくなる、「来るな」と言われると来たくなる、というのが猫の習性です。ほら、こういうことわざもあるでしょ。 『女と猫は人が呼ぶときには来ないで呼ばない時に来る(byボードレール)』 スミエも女の子。気まぐれな子猫なんです。 そうして感謝祭の前日、キャットマンとブライアンがパトロールに出かけている間に、キャリーバックにささやかな荷物を詰め、一人でここまでやってきました。 みすぼらしい服を着た汚れた顔の人たちが足を引きずりながら歩いています。道の真ん中でたむろしている人たちがいます。その横を通ったとき、嫌な臭いがしました。向うから片手をポケットに突っ込んだプリズンウォーク(注1参照)の若者が近づいてきます。スミエの側まで来ると、ニタニタ笑いながら 「ねぇ、1ドル貸してよ」 随分、馴れ馴れしい口調で言います。 スミエが「ない」というと、軽く手を挙げてニタニタ笑いながら行ってしまいました。 歩いていると、「変な人」「気味の悪い人」「怖い人」「なんだかよくわからない人」を度々見かけます。でも、スミエの顔見知りにはひとりも出会えませんでした。 「汚い・臭い・怖い」――アンダーワールドを代表する形容詞が三つもそろった非情の街テンダーロイン。スミエが生まれて初めてみたサンフランシスコの裏側です。 スミエは歩き続けました。どこをどう歩いたのかわかりません。歩き疲れてちょっと休もうかと思っても、歩道はごみとシミだらけ。そんな汚い所に座りたくはありません。綺麗な場所を探してさらに歩き続けると、小さなコミュニティーガーデンを見つけました。フェンス越しに中をのぞくと、ごみもなく、雨宿りにちょうどいい軒下もあります。 (ここはテンダーロインの中にある貸し菜園。利用者以外立ち入り禁止。入口には鍵がかかっています。) ほっとした途端に、おなかの虫がフニャァ~~と泣きました。そういえば、家を出てから何も食べていません。おなかがペコペコです。でもツナは持ってきませんでした。お金もありません。スミエは「はぁ~」とため息をついて、ガーデンの中に入り、スコップやバケツがしまってある小屋の軒下に座りました。ここならば雨には濡れません。でも、一人でじっと座っていると寒くて心細くて悲しくなってきました。スーパーヒーローの訓練生はこんなことで泣いちゃいけないとわかっていても、涙が出てきます。スミエはキャリーバックからテディーベアのぬいぐるみを取り出しました。 「つまんないね、こんなとこ。寒いし、汚いし。面白いことなんて何にもないし。やっぱりこんなとこ来るんじゃなかった。雨が止んだら帰ろうね」 スミエは、テディーベアに語りかけます。でも何も答えてくれません。テディーベアと一緒に、寒さをこらえてうずくまっていると、大好きな食べ物が頭に浮かんできます。ブライアンのくれるツナの缶詰め。バターがたっぷりついたパンケーキ。甘いミルク。生クリームの一杯のったパンプキンパイ。増々おなかが減ってきました。もっと違うことを考えようと思っても、頭の中はすぐに食べ物に占領されてしまいます。 そのうちにあたりが暗くなり、雨脚は遠のくどころか増々、激しくなってきました。寒さ、空腹、寂しさ、不安。惨めな思いを抱いたまま、眠気に襲われるまでずっと座り続けていました。 それから数時間後、スミエは自分の部屋のベットで目を覚ましました。家まで連れ戻したのはキャットマンです。パトロール中にスミエを見つけ、それからずっと後をつけていました。スミエが危ない目にあわないように1日中キャットマンが見守っていたのです。 スミエにはキャットマンという守護者がいます。帰る家もあります。でも、路上で生活している人たちには何もありません。お金もない、家もない、食べ物もない、かろうじて持っているものといえば、着古した洋服と自分の命だけ。雨のガーデンでスミエが感じたことは、路上で生活している人たちが毎日感じていることです。 テンダーロインには無料で食べ物をもらえる教会があります。でも、食べ物だけでは不安を消し、孤独を満たすことはできません。 「どうすればいいんだろう。何が足りないんだろう」 スミエは考えました。そうしてあれこれ考えているうちにグッドアイデアが浮かびました。 『良いと思えばレッツゴー』――お師匠キャットマンの教えです。 スミエはきれいな便箋に手紙を書きはじめました。 (なぜ、猫に字がかけるのか? キャットマンに教えてもらったんですよ。その辺のことは現在製作中の『キャットマンビギンズ』をお楽しみに) 手紙を書きおわると、貯金箱からコインを数枚取り出して手紙と一緒に封筒に入れ、それを持ってテンダーロインの教会に行きました。 今日は感謝祭です。ターキーとパンプキンパイをもらうために貧しい人たちがたくさん集まっています。ボランティアの人たちも、炊き出しを手伝っています。その中に黒人の神父様がいました。 スミエが手紙を渡すと、神父様はにっこり笑って封を開き、読み始めました。 「神父様へ わたしのなまえはスミエです。きのう、ちょっとだけ路上せいかつをしました。とても寒くてこわかったです。 でも、キャットマンが助けてくれました。キャットマンはいつもスミエのことを守ってくれます。路上せいかつをしてる人たちにも、キャットマンみたいに、見守ってくれる誰かがいたら、きっとさびしくないと思います。今よりも、もっとがんばれると思います。 だから、スミエは路上せいかつをしてる人たちを守る頼もしいバックアップになろうと思います。スミエが見守ってるから安心だと思ってもらえるスーパーヒーローになりたいです。 スミエが貯めたコインをいれました。このお金でターキーとパンプキンパイをたくさん作ってください。みんながおなかいっぱい食べられますように。 キャットマンの弟子。スーパースミエより」 神父様は手紙を読み終えると、優しい笑みを浮かべ、封筒の中に入っていた1ダイム10個を募金箱に入れました。 (1 dime 10個は約100円) -------------------------------------------------------------------------------- 注1;プリズンウォーク; ポケットに片手を突っ込んで歩くのは囚人特有の歩き方。たいていポケットの中には薬物かナイフ、拳銃が入っています。収容所の中で囚人同士がすれ違った時に、看守に見つからないように武器やお金などの受け渡しが素早くできるように、一方の手はポケットから出しています。テンダーロインのような犯罪者が集まる街で、こういう歩き方をしていると、警官に呼び止められることもあります。ただし、日本人の観光客がテンダーロインでこれをやっても、「こいつはアホちゃうか」と思われるだけです。警官に目を付けられる心配はありませんが、もっとやばい人に呼び止められるかも。 --------------------------------------------------------------- あとがき 読んでいただきありがとうございます。 次回作はスミエのお話です。カテゴリーの「次回作・予告編」に簡単な作品紹介を載せました。 お時間ありましたら、のぞいていただくと、作者、ハッピーになります。 どうぞよろしゅうに。 #
by prairycat
| 2014-02-12 21:23
| 課題
2014年 02月 12日
2014年 02月 12日
デーモン小暮閣下の弟子 デーモンおちょ暮 作 おはよう諸君。
今日は、ヒーローとは何かという非常に高度なテーマについて、魔界のヒーローである吾輩がレクチャーしよう。 諸君たちの中には、悪と戦うスーパーヒーローはかっこいいと思っている者もいるだろう。、スポットライトがパァッーと当たって、華々しく登場し、ハイテクウエポンで悪を叩き、事件が解決すると、新聞は書きたてる、テレビは騒ぐ、ギャルファンからも「キャーキャー」騒がれ、どこへいってもサイン攻め。それに加えて、写真集がベストセラーになるというわけだ。 だがな、諸君、よく考えてみろ。通常、悪いやつらはどこにいる? スポットライトが当たるような明るい場所にいると思うか? 吾輩の経験からいうとだな、悪い連中というのは暗い場所を好む生き物だ。スポットライトが当たるような場所で何時間待っていても、やつらは出てこない。それから、もうひとつ、スーパーヒーローの仕事場には、「キャァ~~~~~~!」という叫び声はあっても、「キャーキャー」騒ぐ黄色い声はない。 舞台演劇界には、『スポットライトは麻薬と同じ』という格言があるが、ひとたびスポットライトを当てられると、「自分は有名人だ」という快感に酔いしれ、その魔力からはなかなか抜けられない。その結果、我々悪魔のように上から目線でものを言い、見えない鼻が伸びてくる。これではいかん。絶対にいかん。スーパーヒーローは常に謙虚でなければいかん。 アメコミスーパーヒーローの歴史を振り返ってみると、スーパーマンの時代はまだよかった。ところが、この頃はどうだ。ちょっとちやほやされると直ぐに天狗鼻の高慢ちきになるのが増えているな。困ったものだ。 それを戒めるために、最近のスーパーヒーローはマスクマンで登場するのだ。顔にぴったり張り付いたマスクは、鼻を低く保つのに効果がある。諸君の周りに、天狗鼻がいたら、マスクか目出し帽をプレゼントしてやれ。もらった相手は「なぜ、マスク?」と疑問に思うかもしれないが、タダより嬉しいものはない。きっと喜ぶだろう。諸君は後ろで「ケケケ」と笑っていれば、多少はストレス解消になるだろ。 ングゥワハハハハハ それでは諸君、また会おう。 ----------------------------------------------------------------------------------- #
by prairycat
| 2014-02-12 19:48
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